Home/Blog/

『ベーオウルフ』

同名の本を2冊。

『ベーオウルフ』

忍足欣四郎訳:岩波文庫

古英語による英雄叙事詩で、8世紀頃に成立したものとされています。物語はおおまかに二つに分かれ、前半部では若き日の主人公の怪物退治が、後半部では老いた主人公が竜を退治するも自らも力尽きるくだりが歌われています。

硬派というか大変骨太な詩で、ヒロインの類などは全く登場しませんし、主人公がうじうじ悩んだりすることも一切ありません。英雄ベーオウルフの行動のみが本筋として語られ、それらは大変勇ましいのですが、詩全体としては暗いトーンで覆われているような気がします。後半の竜退治では、トールキンの『ホビットの冒険』を思い出しました。宝の山を守っている様子などそのまんまです。実際トールキンもこの作品を好んだようで、『ベーオウルフ』に関する論文も書いているそうです。

あとは物語そのものの面白さもさる事ながら、訳が非常に素晴らしいと思いました。重厚な文体でありながら、とても読みやすい。注釈や作品についての解説も読み応えのあるもので、いい本よんだな~という気にさせられました。

『ベーオウルフ』

ベーオウルフ 妖怪と竜と英雄の物語―サトクリフ・オリジナル〈7〉

ローズマリ・サトクリフ著:井辻朱美訳:原書房

実は読んだのはこちらが先。こちらは散文形式ですが、脇筋が削除されたり補完的な描写がある他は原作と全く同じ内容です。文字のサイズと字間が異様に大きいものの、お子様向けの文体というわけではなく、むしろ古語調を意識したいかめしい言い回しが多用されています。ちょっと読みづらかった気も。それでも1時間余りで読めてしまったのですけど、話は過不足なく書かれているので筋を知るのには充分だと思います。