Home/Blog/

『ニーベルンゲンの歌』

ニーベルンゲンの歌〈前編〉

13世紀のドイツで成立した、有名な叙事詩。一言で言えば復讐劇、それも半端でない、兄妹親族相争う血みどろの復讐劇です。

本書の解説によると「ドイツのイリアス」とも称せられるほどの作品なのですが、勇壮・華麗よりも陰鬱・無惨の気が濃く、好きなタイプのお話とは正直言い難いです。肝心の復讐の動機についても、夫の殺害に加え財宝の強奪という二つの要素があるために、王妃クリエムヒルトの言動が今ひとつ弱いというか、定まらない印象を受けます。口承文学ならではの定型的な繰り返しが読んでくどいと感じられる部分も少なくありません。

それでも何だかんだ言って結局面白いのは確かですし、多数の登場人物のうち、何人かの死に様には心を打たれるものがあります。ちなみに死なない人の方が圧倒的に少なかったりします・・・

ところでこの物語、完全な創作というわけではなく、5世紀頃の史実に古くからの伝承を交えて成立したもののようです。より原始的な姿を伝えるものとして「ウェルスンガ・サガ」なる作品があるそうなんですが、日本語で読めるのかどうかは不明。ジークフリートやブリュンヒルデ、彼等の登場する伝説群はなかなか面白そうですし、いずれじっくり読んでみたいものです。