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クレティアン・ド・トロワ『獅子の騎士』 フランスのアーサー王物語

クレティアン・ド・トロワ『獅子の騎士』―フランスのアーサー王物語

『ランスロ』『ペルスヴァル』同様、クレティアン・ド・トロワによるアーサー王ものについて研究したもので、作品の日本語訳も収録されています。『獅子の騎士』はイヴァン(オーウェイン、イウェイン)が妻の怒りを買い、あてもなく冒険を繰り広げる途上でライオンを助けて・・・てなお話。『ランスロ』などと比べるとファンタジー度の高い、とても面白い物語です。

『ペルスヴァル』もそうですが、この『獅子の騎士』は『マビノギオン』に同じ題材による物語があります(「泉の貴婦人」)。両者とてもよく似ているのですが、本書によると底本を同じくして制作された別個の作品であり、両者に直接の関係はないとのこと。著者は『獅子の騎士』を数段上に置いているようで、実際構成の緻密さなどは私のような素人にも感じられるのですけど、面白さという点では「泉の貴婦人」もそう劣るものではないと思います。より幻想的とでもいうのでしょうか。

ともあれ、なかなか読みごたえのある一冊ですなのですが、残念なことにAmazonで見る限り新品の入手は困難のようです。私は図書館で借りて読みました。

クレティアン・ド・トロワ『獅子の騎士』 フランスのアーサー王物語
菊池淑子 著
平凡社

以下はちょっと脱線ぎみの話。

実は「ジェレイントとエニド」の連作を描く前、このお話も候補として考えていました。当時読んでいたのはマビノギオンとブルフィンチの方ですが。「ライオンを引き連れた騎士」というのは絵的にも大変魅かれるものがあります。しかし全体的に摩訶不思議度が高くて手に余りそうだったのと、出ずっぱりのヒロインがいないのと(笑)で断念。侍女としてリュネットというとても魅力的なキャラクターが登場するものの、消えている時間が長いんですよね・・・

ちなみに「ジェレイントとエニド」も、クレティアンによる作品があります(『エレックとエニド』)。ただ残念ながら邦訳は出ていないようで。『エレック』に限らず『ブリタニア王列伝』とか『国王牧歌』とか、どなたかばーんと翻訳していただけないものかしらん。