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『トロイア戦記』

トロイア戦記 (講談社学術文庫)

トロイア戦争を詠ったホメロスの「イーリアス」は、それ自体はヘクトルの死をもって終わっています。その後のアキレウスの死や木馬作戦など、事の顛末はよく知られているところですが、作品として「イーリアス」と「オデュッセイア」または「アエネーイス」の間を埋めるのが本書です。

語り口調は「暁の女神が~」とか「魂が飛び去った~」などと「イーリアス」っぽさを感じさせるものです。話もとにかく面白い。個人的なクライマックスはアキレウスの死やトロイアの陥落以上に、アイアスの発狂と自害の巻ですね。もっともトロイア陥落のさまも、映画でもこうはなかなか、という位に迫力のある描写です。それにしても登場人物等の語る言葉がいちいち深い。憎しみや悲しみ、怒りや恨みに捉われている人は、何かしら感じるところがあるかもしれませんね。

『トロイア戦記』
クイントゥス著/松田治訳
講談社学術文庫