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『フランス中世文学集2 愛と剣と』

全3巻のうちのひとつ。クレチアン・ド・トロワの『ランスロまたは荷車の騎士』『ペレスヴァルまたは聖杯の物語』が収録されています。クレチアン・ド・トロワは12世紀の詩人。アーサー王にまつわる物語詩を多数残しており、後世への影響も非常に大きいようです。色々な本で名前を目にするので、かねてから読んでみたいと思っていました。

『ランスロまたは荷車の騎士』

攫われた王妃を救い出すため、ラーンスロット(ランスロ)が冒険を繰り広げるお話。当時荷車は罪人が乗せられるもので、これに乗るのは大変な恥であったとか。これに絡めて物語が展開します。調子は割合軽めで、山あり谷あり、情勢は目まぐるしく変化し、楽しませる事が第一とされている印象です。中世版昼ドラとでもいったところでしょうか。

『ペレスヴァルまたは聖杯の物語』

聖杯の謎を解き明かすべく、パーシヴァル(ペレスヴァル)が冒険を繰り広げるお話。もう一人の主人公と言うべきガウェイン(ゴーヴァン)の冒険と並行して物語が展開します。話のスケールが大きく、調子もややストイック。『ランスロ』が昼ドラならこちらは大河ドラマさながら、引き込まれつつ読んでいました・・・。残念な事に、未完のまま終わっています。書いてる最中に倒れてそのまま亡くなったんじゃないかと思うほど、唐突な中断です。話の盛り上がってきたところで・・・

これらの他に恋愛詩の小品が3篇収められています。上記2作にも共通しますが、情景や人物の装いに関する具体的な描写が多く、そういった面でも大変興味深く読みました。

『フランス中世文学集2 愛と剣と』
新倉俊一ほか訳
白水社