2008/05/30 Friday
8世紀フランスに実在したシャルルマーニュ(カール大帝)とその配下の騎士たちの活躍を描いた物語。15~16世紀にイタリアの詩人によって作られた複数の叙事詩をブルフィンチがまとめた、という性質のものです。
国王とその取り巻きの物語、という点はアーサー王の物語とも共通していますが、円卓のような仕掛けもなくグィニヴィアのような強烈な后も登場せず、物語をとりまとめる求心力は今ひとつ弱い気がします。さらに上記の成り立ちもあってか、時と場所がコロコロ変わるので前の展開を忘れてしまうことも。
しかしながら個々の登場人物とエピソードはそれぞれ魅力的です。全体的には暗い基調の話が多い印象ですが、とりわけロジェロやオルランドの物語のクライマックスはグッと来るものがありました。フランス中世文学集に収録されている「ロランの歌」はこのオルランドの最後の戦いを歌ったもので(ロランはオルランドのフランス語形)、展開は両者で異なるものの、どちらも感動的です。
- 『シャルルマーニュ伝説』
- トマス・ブルフィンチ著/市場泰男訳
- 講談社学術文庫