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密室の恐怖

7時のニュースで、開発中の防犯システムがとり上げられていました。エレベーターという密室での犯罪を防止すべく、監視カメラの画像を分析して異常を感知し、警報を発するとか何とか。VTRでは強盗がカバンを奪おうともみ合いになっているのを感知して、『静かにお乗りください』などと警告している映像が流れていました。その際は「ふ~ん、色々考えるもんだねえ」程度にしか思わなかったのですが、直後に恐ろしい体験をしたのです。

エレベーターに乗りました。8階から1階へ。乗り込む瞬間、視界の端、右手の壁に黒い影が映りました。「セミか?」実際いてもおかしくはない場所なのです。しかし違いました。もっとタチの悪いものでした。

ゴ○○○でした。

ドアを開けようとしましたがもう間に合いません。最寄の階のボタンを押そうとしましたが、実際のところ黒いソレが気になってとてもそんな冷静な行動は出来ません。逃げ場の無い密室で完全に一対一、まさにサシの勝負。

いや、勝負するなんてとんでもない話でして、私は対角線上に間合いを取ってじっと遣り過ごす事にしたのです。こちらが動かなければ向こうだって動かないだろうと。しかし違いました。私が大甘でした。

・・・飛んだのです。
・・・こっちに向かって。

思わず飛びのきました。エレベーターががっくんとする位の勢いで飛びのきました。てか肘の辺り当たったかもしれん。もうそちらを振り返る事など出来ません。心臓をばくばくさせながらドアが開くのを待ち、開くや否や、一目散に逃げてきたのでした。

時間にすればほんの10秒かそこらだったでしょう。しかし私にとっては、久しく覚えの無い濃密な10秒間でした。いやエレベーターって怖いんだと本気で思いましたです。

上の防犯装置があったら、警報が鳴っていたかもしれません。 鳴っていたら・・・鳴ってもどうしようもないですね。