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『ケルト神話 炎の戦士クーフリン』

ケルト神話 炎の戦士クーフリン (ケルト神話)

ケルト神話の英雄クーフリンの生涯を描いた物語。クーフリンは太陽神を父に持つ、アイルランド一と謳われた戦士です。

力強く、激しく、そして悲壮感の漂う物語です。クーフリンの物語を読むのは本書がほぼ初めてで(ブルフィンチの『中世騎士物語』には「アイルランドの勇士キュクレイン」として短いながらも収録されてます)、どの程度著者による脚色がなされているのかわかりませんが(あとがきによれば大変忠実に再話しているとの由)、非常にドラマチックでもあります。

エピソードの中で興味深かったのはアイルランドの英雄の称号を巡る争いの話。巨人が自分の首を切らせ、生きていたら切った相手に同じ事をさせろと要求するのですが、この逸話は『サー・ガウェインと緑の騎士』や円卓の騎士、腕萎えのカラドクのものとほぼそっくり同じです。きっと原形があってそれが各々に取り込まれているのでしょうね。それと序文において、アングロ・サクソンの英雄ベーオウルフと比較している部分も興味深く読みました。

あと個人的に特筆しておきたいのはVictor Ambrus(ヴィクター・アンブラス?)によるペン画の挿絵の素晴らしさです。全く知らなかった名前ですが、点と線・塗潰した面の織り成すリズム感や最低限の対象物を描くだけで最大限に物語を表現しているところなど、本当に凄いと思いました。

『ケルト神話 炎の戦士クーフリン (ケルト神話) 』
ローズマリー・サトクリフ著/灰島かり訳
ぽるぷ出版