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『妖精の女王』

同名の本を2種類。

妖精の女王〈1〉

『妖精の女王』

エドマンド・スペンサー著:和田勇一・福田昇八訳:ちくま文庫(全4巻)

昨年来少しずつ読んでいたのをようやく読了。作者のエドマンド・スペンサーはシェイクスピアとほぼ同世代の詩人で、英国はエリザベス女王の治世です。物語は大きく六つのエピソードに分かれ、それぞれ主人公となる騎士が任務を果たすべく冒険を繰り広げます。

「むかしむかし・・・」という体裁をとってはいますが、「妖精の女王」とはすなわちエリザベス女王の事です。また、「身分ある人々に道徳的訓育を施すこと」がこの詩の主要な目的であると作者自ら語っているだけあって、おべっかや教訓臭が少々鼻につく面はあるものの、純粋に物語として読んでも十分楽しめるものだと思います。竜退治あり、お姫様救出あり、魔女やら黒騎士やら、神さまだってぞろぞろお出ましになるよ~ってな具合。そして主人公の騎士は冒険の過程で幾多の試練を経て「徳」を身に付けていく・・・訳者解説によれば「ファミコンゲームの格好の素材となっている」そうです(笑

訳は大変読みやすいものだと思います。注釈も親切。突然知らない名前が登場して何のこっちゃ、なんて事はありませんでした。

『Illustrations and Ornamentation from THE FAERIE QUEENE』

Illustrations and Ornamentation from the Faerie Queen (Dover Pictorial Archive Series)

ウォルター・クレイン

こちらはウォルター・クレインによる挿絵集、いや独立したイラスト集と言った方がいいのかな。100点を超えるモノクロイラストが収録されています。本体を読む前に購入していたんですけど、少し眺めた程度でずっと本棚に眠っていたのでした。

改めて見るとこれが凄い凄い。一見しただけで、どの場面を描いたものかすぐわかる。膨大な登場人物を描き分け、画面全体を埋め尽くす描き込みに圧倒されます。装飾枠もそれぞれ違ったデザインになっているんですよ。しかも絵の内容とリンクするものだったりする。一体1枚あたりどれ位の時間で描いたんだろう・・・

『ロビン・フッド物語』

岩波新書。中世から現代に到る各時代のロビン・フッド像を考察、紹介したもの。流し読みだったんですが、大変魅力的なイラストが紹介されていたのでメモ。

ハワード・パイル(1853-1911)
『ノッティンガム州の高名なるロビン・フッドの愉快な冒険』

絵本チックな作品のようで、絵と装飾と物語(文字)が見事に融合した緻密なペン画。いずれ要チェック。