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『鏡の国のアリス』

鏡の国のアリス (偕成社文庫 2065)

続編という訳ではないようですが、「不思議の国のアリス」同様、アリスを主人公に書かれた作品。「不思議の国のアリス」は今読んでも大変面白いのですけど、こちらは・・・言葉遊びの要素が強すぎで、日本語で読んでも今ひとつ面白さが理解出来ません。チェスにも馴染みがないですしねえ。

テニエルの挿絵はペン画としては大変見事なものの、肝心のアリスは正直可愛いとは言い難いです。可愛いつもりなのに何故か怖くなってしまったフランス人形みたいな(^^; でもマンガを思わせる大胆な表現とか、絵そのものは本当に素晴らしいと思います。

以前ラッカムの挿絵による「不思議の国のアリス」を紹介しましたが、こちらはどうも描いていないっぽいですね。

『鏡の国のアリス』
ルイス・キャロル著/芹生一訳
偕成社

『トロイア戦記』

トロイア戦記 (講談社学術文庫)

トロイア戦争を詠ったホメロスの「イーリアス」は、それ自体はヘクトルの死をもって終わっています。その後のアキレウスの死や木馬作戦など、事の顛末はよく知られているところですが、作品として「イーリアス」と「オデュッセイア」または「アエネーイス」の間を埋めるのが本書です。

語り口調は「暁の女神が~」とか「魂が飛び去った~」などと「イーリアス」っぽさを感じさせるものです。話もとにかく面白い。個人的なクライマックスはアキレウスの死やトロイアの陥落以上に、アイアスの発狂と自害の巻ですね。もっともトロイア陥落のさまも、映画でもこうはなかなか、という位に迫力のある描写です。それにしても登場人物等の語る言葉がいちいち深い。憎しみや悲しみ、怒りや恨みに捉われている人は、何かしら感じるところがあるかもしれませんね。

『トロイア戦記』
クイントゥス著/松田治訳
講談社学術文庫

『さいごの戦い (岩波少年文庫―ナルニア国ものがたり))』

さいごの戦い (岩波少年文庫―ナルニア国ものがたり)

ナルニア国ものがたりの第7作にして最終作です。ナルニアに最期が訪れる事は各巻冒頭のガイドラインで示されている訳ですが。。。なるほどねえ。頭では理解出来るんですが、心から素直に受け入れられるラストではありませんでした。子供の時に読んでいたらある種ショックを受けてたかもしれない。クリスチャンであれば受け取り方も違ってくるのでしょうかね。

どうでもいい話ですが「どこでもドア」の起源はこんなとこにあったのか!とちょっとした衝撃を受けました(笑)さし絵ももろにそんな感じですしね。

『さいごの戦い (岩波少年文庫―ナルニア国ものがたり))』
C.S.ルイス著/瀬田貞二訳
岩波書店

『魔術師のおい (岩波少年文庫―ナルニア国ものがたり)』

魔術師のおい (岩波少年文庫―ナルニア国ものがたり)

ナルニア国ものがたりの第6作。ナルニア誕生のいきさつが語られます。読んだ感想としては、むしろ番外編みたいな感じかなあと。本編以前を番外編として語るのって今でもよくありますよね、そんな感じ。登場人物たち(特に魔女)が、どことなく話を繋ぎ合わせる為に用意されたようなところがあって、これまでの作と比べて魅力の面でちょっと及ばない気がします。ただアスランによってナルニアが生成されていく描写は大変美しいと思いました。

ルーシィやピーター達は王として国を治めた後に元の世界に戻った訳ですが・・・あの夫婦はどうなるのかしらん?

『魔術師のおい (岩波少年文庫―ナルニア国ものがたり)』
C.S.ルイス著/瀬田貞二訳
岩波書店

『馬と少年 (岩波少年文庫―ナルニア国ものがたり)』

馬と少年 (岩波少年文庫―ナルニア国ものがたり)

ナルニア国ものがたりの第5作。主人公は初めて登場する少年と少女で、ルーシィやエドマンドといったキャラクターも登場はするものの全くの脇役。物語の途中はやや散漫なところがありこれまでの作と比べて精彩を欠く印象を受けましたが、ラストは「男の子と女の子の物語」として大変気持ちの良い終わり方でした。

『馬と少年 (岩波少年文庫―ナルニア国ものがたり)』
C.S.ルイス著/瀬田貞二訳
岩波書店

『銀のいす ナルニア国ものがたり (4)』

銀のいす ナルニア国ものがたり (4)

ナルニア国ものがたりの第4作。前作までのペベンシーきょうだいは登場しないものの、面白さが損なわれないのはアスランという確かな軸がある為でしょうか。新しいキャラクター、泥足にがえもんも大変魅力的ですね。これ、原作ではなんて名前だったのだろう・・・と思ってちょっとググってみたところ"Puddleglum"だとか。"puddle(水たまり)"と"glum(陰気な)"の造語らしいです。このネーミングの翻訳センスも凄いですが、彼の口調が何ともいい感じで。英語の原作を読んだ方がどう感じるのかはちょっとわかりませんけど、この部分に限らず瀬田氏の訳はあくまで格調高い中にも暖かみや味があって、日本語の文章として本当に素晴らしいと思います。

『銀のいす ナルニア国ものがたり (4)』
C.S.ルイス著/瀬田貞二訳
岩波書店

『朝びらき丸東の海へ ナルニア国ものがたり (3)』

朝びらき丸東の海へ ナルニア国ものがたり (3)

ナルニア国ものがたりの第3作。ずばり冒険といった趣で、わくわくするのと同時にまた、とても美しい物語だと思います。中でもリーピチープというネズミの騎士、大変魅力的なキャラクターです。ドンキホーテじゃありませんが、騎士道というやつは異なる価値観の元では滑稽でもあり・・・どこか哀れをもよおすところもあり。それをネズミが真剣そのものでやっているのですから尚の事です。ルイスはどういう気持ちでこの騎士を創り出したのでしょう。。

『朝びらき丸東の海へ ナルニア国ものがたり (3)』
C.S.ルイス著/瀬田貞二訳
岩波書店

『カスピアン王子のつのぶえ ナルニア国ものがたり (2)』

カスピアン王子のつのぶえ ナルニア国ものがたり (2)

ナルニア国ものがたりの第2作。この作品からシリーズ展開を構想したもののようで、物語はより幅広く、奥深くなっている気がします。新たに大勢登場するキャラクター達もそれぞれ魅力的ですね。挿絵の話になりますが二人の小人、トランプキンとニカブリクがそれぞれの性格をとても上手く絵に描き表わしていて感心しました。

『カスピアン王子のつのぶえ ナルニア国ものがたり (2)』
C.S.ルイス著/瀬田貞二訳
岩波書店

『ライオンと魔女 ナルニア国ものがたり(1)』

ライオンと魔女 ナルニア国ものがたり(1)

ナルニア国ものがたりの第一作です。物語の序盤、行って帰ってまた行って・・・とどこかもたもたする印象を受けたのですが、どんどん面白くなって来ますね。それから文章の端々に、ルイスの子ども達に対する細やかな愛情が感じられました。

瀬田氏の訳は趣きあふれるものですし、ポーリン・ベインズによる挿絵も、物語の面白さを過不足なく伝えてくれる素敵なものだと思います。

『ライオンと魔女 ナルニア国ものがたり(1)』
C.S.ルイス著/瀬田貞二訳
岩波書店

『アイスウィンド・サーガ 暗黒竜の冥宮』

アイスウィンド・サーガ 暗黒竜の冥宮

ダークエルフの主人公ドリッズトとその仲間たちが活躍する物語。全3部作のうち以前紹介したものが第1部、本作は第2部にあたります。

本作の実質的な主人公はドワーフのブルーノーでしょう。追うものと追われるもの、さらに登場人物それぞれの思惑などが絡み合いながら物語は進行していきます。テクニックとしては前作より高度なのでしょうけど、ちょっと勢いというか、読者を引き込むパワーは落ちたような気がしないでもなく。キャラクターの魅力で押し切る、という要素が減っているのも一因かと思います。彼自身の冒険ではないので仕方ないとはいえ、ドリッズトがあんまり活躍しないんですよね。彼が直面する問題が彼の内面にとっては非常に重要であっても、読む側としては必ずしも。。最後があからさまに「つづく」なのもちょっと不満です。面白いんだけど、理屈抜きでとにかく面白かった前作に比べると・・・という感じかな。

『アイスウィンド・サーガ 暗黒竜の冥宮』
R.A.サルバトーレ著/府川由美恵訳
アスキー・メディアワークス