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『ドラゴンランス』

ドラゴンランス(6) 天空の金竜

たぶん古典に分類されるんであろう作品。天から帰還した暗黒の女王に立ち向かう、さまざまな種族からなる仲間たち。女王の僕である邪悪なドラゴンを倒すために、タイトルにある伝説のドラゴンランスを蘇らせ・・・てな具合に話は展開します。

作品の一番の魅力は、今やファンタジーの世界ではお約束とも言えるキャラクター達でしょう。ドワーフ、エルフ、人間の騎士などなど、それぞれの行動規範にのっとって存分に活躍してくれます。もっとも「全員」が魅力的というわけにも行かないようで・・・よりによって主人公とも言うべき、一行のリーダーであるタニスに全く魅力が感じられませんでした。

彼には、ハーフエルフの私生児という出自だったり人間・エルフの女性との三角関係だったりと、そこらの脇役とは訳が違うと言わんばかりの設定が付与されています。恐らく作品に幅と深みを出そうという意図があったと思うのですけど、この点については成功しているとは言いがたいんじゃないでしょうか。彼が前面に出てくると途端に読むのがおっくうになるんですよね。書き手が設定を消化するのに手一杯という感じで、これは全く個人的な感想でもなかろうと思うのですが。

他にも、お前よりレイストリン(魔法使い)の方がよっぽど役に立ってるじゃん、とか言いたいことはまだ出てきそうなんですけど、他のキャラクターの活躍はそうしたことを補って余りあるものですし、ドラゴンの大部隊というモチーフは想像力を大いに刺激してくれます。作品自体は大変面白かったので悪しからず。

『ドラゴンランス』1~6巻
マーガレット ワイスほか 著/安田 均 訳
エンターブレイン

『女王エリザベス』

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1939年、マイケル・カーティス監督。

イングランド女王エリザベス1世とエセックス伯ロバート・デヴァルーの恋物語。お互いに愛し合いながらも、権力への野望を捨てられないロバートと国への忠誠を捨てられない女王エリザベス。特にエリザベスの、恋人と国家の間で揺れ動く心の様子が丹念に描写されており、ベティ・デイヴィスの妖怪のような風貌(失礼!)と相まって何とも言えない渋い作品となっています。

Amazonで見る限り現在単品では発売されておらず、エロール・フリンのDVDボックスに収録されているのみのようです。

『ジャンヌ・ダーク』

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1948年、ヴィクター・フレミング監督。

ジャンヌ・ダルクについてはどこまでが史実でどこまでが虚構なのか、私はよく知らないのですけど、割と新しいミラ・ジョヴォヴィッチ主演の映画と進行的には非常に似通っています。違いはダスティン・ホフマンが出るかどうか、位のものではないかと。

しかしながら、観た印象は全く別。正直一寸アレな人にしか見えないミラジャンヌに対して、イングリッド・バーグマン演じるジャンヌはまさに聖少女。戦場においてもあくまで可憐なその趣は、完璧に整ったメイクといいリアルさには欠けるかもしれませんけれども、好みとしては断然こっち、です。

映像はさすがに古さが目立つものの、コスチュームのデザインも秀逸で、中でもジャンヌが着る甲冑の優美なラインは特筆ものかと思います。いささかマニアックな見方ですが(笑

『スター・ウォーズ エピソード3 シスの復讐』

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2005年、ジョージ・ルーカス監督。アナキン少年がフォースの暗黒面に堕ち、ダース・ベイダーへと変貌を遂げるさまが描かれます。

とりあえず映像面では前作よりも楽しめました。右のらくがきに描いた生き物とか、とてもよく出来ていたと思います。ただなまじ前述のドラマがある分、前作以上に割り切りも必要というか・・・よくない方に「うそーん!?」な展開。

いっそ「朝起きたらダース・ベイダーになっていた」とかでも(以下略

『アイスウィンド・サーガ』

アイスウィンド・サーガ〈1〉 悪魔の水晶

ダークエルフの主人公ドリッズトとその仲間たちが活躍する物語です。舞台となるフォゴットン・レルムはダンジョンズ&ドラゴンズというテーブルトークRPGのために設定された世界。

様々な部族が入り乱れての大規模な攻城戦は、指輪物語のヘルム峡谷の戦いを彷彿とさせますが、戦闘が序盤と終盤、同じ場所で全く異なるシチュエーションで繰り広げられるのがミソです。物語の進め方としてはイベントの発生→解決の繰り返しで結構ワンパターンというか、良くも悪くもゲームっぽい印象を受けるのですけど、そんな事はお構いなしで先を読みたくなる面白さがあります。

この作品、廃刊になっていたシリーズを順次復刊させているようなのですが、現在出ているのは3巻まで。エピソードとしてひと区切りついてはいるものの、早く続きが読みたいもんです。

『アイスウィンド・サーガ』1~3巻
R.A.サルヴァトーレ著/風見潤 訳
アスキー/エンターブレイン

『スター・ウォーズ エピソード2 クローンの攻撃』

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2002年、ジョージ・ルーカス監督。

エピソード1を映画館で観て以来ほったらかしだったスターウォーズ。今回もCG、CG、またCGという感じで「これ絶対趣味だけで作ってるだろ・・・」と思いつつ観てたんですが、これだけやりたい放題やられると終いにはこれはこれで良いのかしらん、という気がしてくるから不思議なものです。とりあえずエピソード3も観ておこうと思います。

『不思議の国のアリス』

不思議の国のアリス

内容については今更説明するまでもないでしょう。本書ではアーサー・ラッカムの挿絵が収録されています。アリスはちょっぴりおしゃまな感じ、地下の住人たちはリアル・・・というより時にグロテスクとすら思われる存在感をもっていきいきと描かれています。動物達の描写にはなんとなく北斎を思い出しました(いや、似てはいませんけどね)。とても美しくはあるものの、子どもが見たら怖がるんじゃなかろうかとちょっと心配にならないでもなく。

それにしてもカラーの挿絵は以前にもみていたのですが、挿絵本来の形―物語を読みながら目にすると、一段と魅力的です。さらに本文中ペンで描かれたモノクロのカットも多数挿入されており、これらがまた大層素晴らしい。より軽妙とでもいいますか。挿絵画家ラッカムの力を再認識いたしました。

しかし今更とは言いましたがこのお話、改めて面白いというか可笑しいですね。久しぶりに漫画ではなく読書で声を立てて笑ってしまいました。

『不思議の国のアリス』
ルイス・キャロル/高橋康也・高橋迪 訳
新書館

『仔犬のローヴァーの冒険』

仔犬のローヴァーの冒険

トールキンによる、『ホビットの冒険』や『指輪物語』に先立つ初期の作品です。意地の悪い魔法使いにちょっかいを出したために小さなおもちゃに姿を変えられてしまったローヴァーが、さまざまな冒険に巡り会う・・・というお話。

もともとは自分の子供達に語って聞かせた物語を膨らませていったものだそうです。実際、序盤では荒唐無稽なほら話というのが率直な印象でしたが、物語が進むにつれスケールは大きくなり、緊密度も増してぐんと面白くなってきます。登場する三人の魔法使いがそれぞれどことなくガンダルフを連想させるのも魅力のひとつと言ってよいでしょう。キャラクターとしてより原始的な分、「偏屈なじいさん」的な性格がより強く出ている気がします。

『仔犬のローヴァーの冒険』
J.R.R.トールキン著/山本史郎訳
原書房

美術展『パリへ―洋画家たち百年の夢』

東京藝術大学大学美術館にて、6月10日(日)まで。

「日本の洋画」にスポットをあてた展覧会。展示形式は大雑把にみると黒田清輝を中心とした前半部と、佐伯祐三、藤田嗣治らの後半部に分かれています。

黒田清輝は今回のお目当て、と言っても美術の教科書とかでみる人―レベルの認識だったのですが、重要文化財に指定されている『湖畔』をはじめ、さすがに見ごたえがありました。絵全体から凛としたものが感じられ、肌の表現に独特の風味があります。

後半は好みの都合で素通りしたものの、展示内容はそこそこっぽかったので、両方お好きな人であれば贅沢な楽しみ方が出来そうです。平日の昼過ぎでしたが、年配層を中心に結構客も入っていました。

『エラゴン 遺志を継ぐ者』

2006年、シュテファン・ファングマイアー監督。

平凡な少年が実はドラゴンに選ばれしドラゴン・ライダーで、ドラゴンと共に戦う・・・てなお話。小説が原作ですが未読です。

うーん。とりあえず退屈はしませんでしたけど。中盤まではジェレミー・アイアンズをはじめとする脇役陣でもたせ、終盤はCGでゴリゴリ押し切る・・・といった趣があり、お話としてはかなりベタです。多分原作ではあるだろう、主人公がさまざまな葛藤を乗り越えて成長していく的な描写を一切省略し、事ある毎にほいほいレベルアップしていく様にはある種の潔ささえ感じるものの、やっぱり一寸なんだかなあ。原作との関係はわかりませんが話終わってないし。

ドラゴンがらみの映像はなかなか面白かったですし、さくっと割り切って見るのがよろしいかと思います。