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『ジョン・エヴァレット・ミレイ展』

Bunkamura ザ・ミュージアムにて、10/26(日)まで。

ミレイと言えばラファエル前派の画家で「オフィーリア」の作者・・・といったところがミレイに対する私の認識で、他には「両親の家のキリスト」など数点の作品を印刷等で目にした程度でした。「オフィーリア」は異常なまでに徹底した細密描写に圧倒されるものの、逆にその徹底振りがどこか無機的というか、オフィーリアの瞳も鼻も唇もそこらの葉っぱと同じレベルで捉えているんじゃないかなどと思われたりもして、ちょっとな~という印象も持っておりました。とか言っといてナンですがまあ「オフィーリア」についてはですね、死ぬまでに一度は現物を見ておいて損は無いですよやっぱり。もうね、凄い。クラクラ来ました。解りにくい表現ですみません。。

展覧会として興味深かったのはむしろ上記のような私の認識にはなかった部分、プロブレム・ピクチャー、本の挿絵、ファンシー・ピクチャー、肖像画といった分野の作品たちで、これらの作品には作者の柔らかな目線の感じられるものも少なからずありました。中でもファンシー・ピクチャー(子供や若い女性を描いた風俗画の一種)に属する作品、ミレイの娘をモデルにした「初めての説教」「二度目の説教」にはモデルを務める娘の緊張した様子だったりそれを見つめるミレイの眼差しだったりが伺われて、思わず頬がゆるみました。

本展を観た感想として、彼には「ラファエル前派の画家」というよりも「ヴィクトリア朝の画家」という形容がまさにぴったり来るように思います。観る前よりもミレイが好きになりました。

「未亡人」をアップ

「未亡人」をアップしました。タイトルは適当です(笑) 今度は熟女系、みたいな。和服のラインは洋服のそれとは全然違うので描くのは大変ですけど、洋服にはない色気がありますね。

絵の主線

カラーのイラストを描く際、主線に頼らない方法を試していた時期もあったんですが、最近はやっぱり線があった方がいいかなあと思っています。

線画

線なしの状態

左の線画を右の画像に乗算で重ねてます。以前塗り過程の記事を書いた頃は鉛筆の線画もペン入れ並に集中してやっていましたが、今は割りとラフに描いたのをベースにPainterで消したり描き直したりしています。この絵だと目と髪の部分位しか元の鉛筆画は残ってないかも。しかも髪なんて塗りと合ってない(笑) 塗りも最近は殆どPainterだけでやっています。以前は例えば「月光」なんかはPhotoshopのみで塗っていて、なめらかな感じはPSの方が出しやすいような気がします。この辺は好みですよね。「口づけ」位にザックリしたのが個人的にはとても好きなんですけど、これだと扱える絵の種類が限定されてしまうかなあ・・・などと色々考えながらやってます。

「小悪魔系」をアップ

「小悪魔系」をアップしました。元の絵は何も着てなかったりします。そっちも古い記事にまぎれ込ませてますが。この絵はサイトのイメージ的にアレかな~とか考えてしまうのが煩わしくなって来たので、こっそり別部屋を作成中。お楽しみに!・・・てかここではお知らせしませんから。

『アーチャー 名射手の伝説と弓矢の歴史 (Truth In Fantasy)』

アーチャー 名射手の伝説と弓矢の歴史 (Truth In Fantasy 80) (Truth in Fantasy 80)

新紀元社様より発売された『アーチャー 名射手の伝説と弓矢の歴史 (Truth In Fantasy 80)』にて、カバーおよび本文中のモノクロイラスト10点を描かせていただきました。古今東西あらゆる弓の種類と歴史、弓の名手にまつわるエピソードなどを面白詳しく解説した本です。アーチャーの方(?)もそうでない方も必携ですよ。

『アーチャー 名射手の伝説と弓矢の歴史 (Truth In Fantasy 80) 』
森村宗冬著
新紀元社

ちなみに今回より従来のペンネーム「和島楷」ではなくて本名の川島健太郎で描かせていただいてます。これについてはまた別の項で。

本書で描いたイラストの中からカバーイラストと挿絵2点をアップしました。他にもギリシャのヘラクレスや百年戦争のクレシーの戦い、三十三間堂の通し矢などいろいろ描いてますので、機会があれば是非ご覧になってみてください。

本名デビュー

突然ですが今後ペンネームの「和島楷」に変わり、本名の川島健太郎で活動していく事にいたしました。既に少し前から出版社さまなどに対しては本名のみで活動していたのですが、この度本名でイラストを描いた本が発売されましたので、サイト上でもご報告させていただきます。

元々イラストのお仕事をするなんて考えてもいなかった頃は、「ペンネーム」というものに対する強い憧れがあったんです。これはもう理屈じゃない、本当に子供っぽい憧れ。仕事が貰えるようになったら絶対ペンネーム使ってやる!・・・と思ってました。そしてありがたい事にこれまで幾つかのお仕事もさせていただいたのですが、実際ペンネームで仕事をしてみて、どこかしっくり来ない感じを抱いておりました。我が事ながら「和島楷とは誰ぞや?」みたいな、どこか人ごとのような感覚があって、自分に対して甘さが残ってしまったり。これはもちろん自分に限った話ですよ。

これまでペンネームでさせていただいた実績も多くはありませんし、これからに向け覚悟を決める上でも、今後は本名を使っていこうと考えた次第です。はからずも初めてカバーイラストを描かせていただいたお仕事が本名デビュー作となり、結果的にいいタイミングだったのではないかと思ってます。これからは和島じゃなくて川島という事で(お気付きかもしれませんが「か」を除いただけです)、どうぞよろしくお願いいたします。

『コロー 光と追憶の変奏曲』

会期末ぎりぎりで見てきました。国立西洋美術館にて、8/31(日)まで。

この展示会はコローの若い頃から晩年に至るまで、あらゆる年代の作品が集められているところがミソかと思います。各年代で明確に作風が異なっている。いわゆる「コローの絵」としてよく知られている作品の数々は悉く60歳代以降、晩年にかけて描かれたものだったんですね。青年期から壮年期にかけての作品は光の表現などに卓越した技が感じられるものの、面白みの無い風景画・人物画といった印象で、逆にその大器晩成っぷりに驚かされました。また老境にあっての多作ぶりも凄いと感じましたが、作品によっては手馴れた「チョチョイのチョイ」感が垣間見えてしまわないでもなく。でもやっぱり好きだな、うん。

『ケルト神話 黄金の騎士フィン・マックール 』

ケルト神話 黄金の騎士フィン・マックール (ケルト神話)

アイルランドの伝説上の英雄フィン・マックールと彼の率いるフィアンナ騎士団の物語。個々に伝わる物語を著者のサトクリフがひとつの大きな物語に仕立て上げたもののようです。妖精族(ダナン族)や魔法が頻繁に登場し、全体を通じて幻想的な雰囲気に満ちています。貞節に欠ける妻との恋に落ちる腹心の部下、大きな戦による劇的な最期など、アーサー王の物語を思わせるモチーフも随所に見られ、どういった関連があるのかちょっと興味深いところです。楽しめる物語だと思います。

『ケルト神話 黄金の騎士フィン・マックール 』
ローズマリー・サトクリフ著/金原瑞人・久慈美貴訳
ぽるぷ出版

『ジョン・ボールの夢』

ジョン・ボールの夢 (ウィリアム・モリス・コレクション)

語り手である「私」が14世紀イギリスは「ワット・タイラーの乱」渦中の村にタイムスリップし、指導者のジョン・ボールと対話するというお話。

モリスの社会主義思想がモロに反映されていますが、思想的側面に関心がなくとも(私はそう)、普通に歴史小説として楽しめます。本当に見てきたかのような、しつこい位に細かい描写には恐れ入るばかりで、その綿密な事といったら彼の描く装飾文様さながらです。まあこの辺は彼の魅力のひとつである反面、とっつきにくさにも繋がっている気がしないでもありません。装飾文様を形づくる線一本一本を目で追うようなしんどさ、とでも言いましょうか(^^;

当時の社会制度や弓を主体とした戦術に関するものなど、注釈が大変充実しています。

『ジョン・ボールの夢』
ウィリアム・モリス著/横山千晶訳
晶文社

『ペンで描く―スケッチから細密描写まで』

Web拍手でいただいたコメントでペン画の技法に関するものがありましたので、私が世話になっている書籍をご紹介します。参考になれば幸いです。

『ペンで描く―スケッチから細密描写まで』
A.L.グプティル著
マール社

ペン画について基本的な事から高度な表現まで網羅した、詳細な解説書です。現代のマンガの表現とはやや立ち位置が異なるものの、マンガを描く人にとっても参考になる部分は多いのではないでしょうか。

まず入口ではペンによる線の引き方やクロス・ハッチなどの様々なトーン表現について、練習方法も含めて丁寧に解説されています。

続いて構図の取り方や濃淡によるコントラストの表現など、絵全般に通ずる基本的な知識と技法。おそらくデッサンの基礎的な知識があるとなお良いのでしょうが、作例も豊富で分かりやすい内容です。

更には植物や建物など具体的な事物について、その表現方法を多数の作例と他の画家による作品をも交えて解説しています。思うにこの作品のチョイスが大変秀逸で、絵のジャンル・画風ともにいずれもハイレベルなものが多岐に渡って掲載されています。著者による解説・作例自体、同じ物を描くにも無数の表現手法があるという前提に立ったものであり、ペン画の奥深さを感じさせてくれるものとなっています。

ペン画の技法書についてはこれ以外読んだ事がないのですが、私自身はこれ1冊で十分という感じです。どう描いたものかと悩んだ時など、見返してみるといつも何かしらの示唆を与えてくれます。